呼吸器外科
診療内容
呼吸器センターの外科部門を担当し、肺がんを中心とした悪性疾患、胸部外科領域の手術を担当しています。高いレベルの手術を地域の皆様へ提供できるよう努めています。手術はほとんどの症例で胸腔鏡を使用した短時間手術を実施し、体への負担を軽くするための低侵襲手術を心がけています。
対象疾患は、肺癌・転移性肺腫瘍・中皮腫・胸腺癌といった悪性疾患から、良性肺腫瘍・縦隔腫瘍(胸腺腫・胸腺嚢胞)・気胸・膿胸・外傷などの疾患です。
当科は担当医だけでなく、呼吸器外科医師全員がチームとして個々の患者さんの診療にあたり、医療の質の向上を目指しています。毎週月曜日には、呼吸器内科医、放射線治療医と合同カンファレンスを行い、個々の患者さんの治療方針について検討を重ねています。肺がん治療に関してはガイドラインに添った標準治療を選択しますが、個々の状況に応じた十分な検討をします。完全切除する根治手術をめざし、抗がん剤治療や放射線治療を併せて行う集学的治療も考慮します。看護師、薬剤師、栄養士とも適宜カンファレンスを行い、チーム医療を行っています。
患者さんとは病状に対する治療の理解を十分に深めてから(インフォームドコンセント)治療を開始します。外来と手術前日の2回以上にわたってお話をしたうえで、個々の患者さんの希望に添いながら治療を進めます。
手術の際は、原則手術前日入院です。手術翌日には早期離床を積極的に行います。術後合併症は減少しており、80歳代の手術も増えています。当院で手術を受けていただいたすべての方が、元気に退院していただくことを目標に、きめ細やかな周術期管理を行っています。クリニカルパスを導入し、患者さんには前もって退院までのスケジュールを記した表を配布しています。肺がんでは術後1週前後で退院、縦隔腫瘍、自然気胸では術後4-5日程度での退院を基準としています。
多くの手術は胸腔鏡を用いて行っています。胸腔鏡を用い、短時間の手術を実施することで、見た目の傷が小さいだけでなく、早期の回復、術後の痛みの軽減、合併症の軽減、入院期間が短縮されています。
以下に、当院で行っている、各疾患に対する手術方法を記載します。
原発性肺癌
切除によって根治を目指す原発性肺がんに対する標準術式は、肺葉切除術+リンパ節郭清です。当科では胸腔鏡下を用いた手術を行い、5-6cm程度の切開と、1-2cm程度の切開2カ所から長い鉗子を使用し患部の切除を行います。標準的な手術時間は1時間半から2時間、入院期間は1週間程度です。
自然気胸
肺の弱い部分(ブラ)から空気漏れが生じて肺が虚脱した状況を気胸といいます。気胸に対する治療は①経過観察②胸腔ドレナージ③手術があります。①②では軽快後の再発率は50%程度と言われています。③手術は再発する場合や空気漏れが継続する場合、明らかなブラがある場合に選択され、胸腔鏡を用いて、気胸の原因となるブラなどを修復します。カバーリング材などを使用して肺を補強することもあります。手術後の再発率は数%程度と言われています。
転移性肺腫瘍
他臓器のがんが肺に転移することはしばしばあります。原発巣が制御されている場合は、完全切除が可能であれば根治のために出来るだけ切除します。病変の範囲に応じて切除範囲を決定します。
縦隔腫瘍
心臓や気管、食道、血管のある胸部の中心部分を指し、同部に発生した腫瘍を縦隔腫瘍といいます。胸腺腫・胸腺嚢胞・胸腺癌、奇形腫などがあり、外科的切除が適応であれば、可能な限り胸腔鏡下に切除を行います。胸腔鏡下に切除が難しいときには胸骨正中切開で実施します。
悪性胸膜中皮腫
アスベストに関連する胸膜に発生する腫瘍であり、切除により根治性が目指せる場合は、片側胸膜を全切除することで、腫瘍の完全摘出をめざします。呼吸器外科領域の中ではもっとも体への負担の大きな手術です。皮膚切開は30cm、手術時間は4-6時間、入院期間は2-4週を要します。
診療担当・日時
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
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午前 | B-3 | 多久和 | 多久和 | (手術) | 多久和 | (手術) |
午後 | B-3 | - | - | - |
診療実績
呼吸器外科手術統計
(単位:件)
2018年度 | 2019年度 | ||
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全身麻酔手術 症例数 | 164 | 163 | |
疾患別 | 原発性肺癌 | 71 | 75 |
転移性肺腫瘍 | 16 | 8 | |
良性肺腫瘍 | 10 | 11 | |
気胸・嚢胞性肺疾患 | 32 | 31 | |
縦隔腫瘍 | 11 | 10 | |
膿胸 | 17 | 9 | |
その他 | 7 | 19 |
臨床試験について
スタッフ紹介
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部長 多久和 輝尚
[専門医・認定医] |
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医員 福田 章浩 |
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医員 大迫 隆敏 |